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on 2017-6-14
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今月の分子(Molecule of the Month)

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2007/12: No. 96
酸化スクアレン環化酵素(Oxidosqualene Cyclase)

著者: David S. Goodsell
日本語訳: 工藤 高裕(PDBj)
酸化スクアレン環化酵素(PDB:1w6k)

最近、コレステロール(cholesterol)は悪い評判を得ているが、コレステロールは生命にとって不可欠なもので、膜の流動性維持に必要であったり、ビタミンDやステロイドホルモンのように重要な分子の元を作る材料となったりするものである。ところが、脂肪の多い食事をするなどしてコレステロールが増加すると、それは粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化、atherosclerosis)や心臓疾患につながる。今日医師たちは、健康的な低脂肪の食事と運動の組み合わせによって、2つの側面をもつコレステロールのバランスを保つことができると提言している。

コレステロールの形成

コレステロールは大きな脂質分子で、4つの炭素環が結合し、それにいくつかの水素原子と1つの酸素原子が結合した構造をしている。コレステロールを単純な開始物質から合成するには、24個の酵素が必要である。ここに構造を示すPDBエントリー 1w6kの酸化スクアレン環化酵素は、このコレステロール合成過程の中でもっとも複雑な反応を行っている。長くて薄い炭素鎖と酸化スクアレンを持ち、4つのつながった炭素環を作り上げる。この酵素は、最終産物として活性部位にラノステロール(lanosterol)を持つ(図中の白っぽい分子)。

脂っこい基質

酸化スクアレンもラノステロールもほとんど炭化水素でできていて、あまり水には溶けない。そこで酵素は、細胞の内側にあるマイクロソームの中で膜に突き出ることによってこの問題を解決している。そうすることにより酸化スクアレンを直接膜の外に引っ張り出し、ラノステロールを解放して外に戻すことができる。ここに示した構造は、小さな脂質(図中の紫色の分子)を含んでいて、膜に突き出ているタンパク質の側面に結合している。図を見ると、脂質の1つが活性部位に続いている穴の中に移動しているのも確認できる。

コレステロールを下げる

HMG-CoA還元酵素(PDB:1hwk)

今のところ、血中のコレステロール濃度を下げる薬は、世界でもっとも売れている薬の一つである。その中でもっとも一般的に処方されている薬はスタチン(statin)で、この薬はコレステロール合成の最初の段階の一つを司る酵素の活性を阻害する。ここで示しているHMG-CoA還元酵素(PDBエントリー 1hwk)は、アトルバスタチン(atorvastatin、商品名 リピトール Lipitor)が酵素の活性部位に結合したものである。研究者は、酸化スクアレン環化酵素によって行われる反応など別のコレステロール合成過程を阻害するような他の化合物を探している。

構造を見る

左:細菌の酸化スクアレン環化酵素+スクアレン(PDB:1ump) 右:ヒトの酸化スクアレン環化酵素+ラノステロール(PDB:1w6k)

2つの構造を見ることで、環化反応の最初と最後の両方を見ることができるが、ここでは少し別の酵素をみていただきたい。左に示したのが細菌のスクアレン環化酵素(PDBエントリー 1ump)で、活性部位には形の変化したスクアレンが結合している。酵素がどのようにして、へびのような分子をジグザグな形にしているのかに注目して欲しい。この酵素はスクアレン鎖を完全に並べ、図の上にあるヒスチジンによって活性化されたアスパラギン酸が、4つのつながった炭素を形成する反応を開始する。右に示したのは、ヒト酸化スクアレン環化酵素に最終産物のラノステロールが結合したもの(PDBエントリー 1w6k)である。こちらでも反応触媒にアスパラギン酸が使われているが、ヒスチジンの代わりに2つのシステインによって活性化される。

2007/11/27 にPDBで "oxidosqualene cyclase" のキーワードで検索した結果リストをこちらに掲載しています。

酸化スクアレン環化酵素についてさらに知りたい方へ

以下の参考文献もご参照ください。

  • K. U. Wendt (2005) Enzyme mechanisms for triterpene cyclization: new pieces of the puzzle. Angewandte Chemie International Edition 44
  • M.W. Huff and D. E. Telford (2005) Lord of the rings: the mechanism for oxidosqualene: lanosterol cyclase becomes crystal clear. Trends in Pharmacological Science 26

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