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日本蛋白質構造データバンク(PDBj: Protein Data Bank Japan)は、JST-BIRDの支援を受け、米国RCSBおよび欧州EBIと協力して、生体高分子の立体構造データベースを国際的に統一化されたアーカイブとして運営するとともに、様々な解析ツールを提供しております。 今月の分子(Molecule of the Month)
このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」を日本語に訳したものです。
No.98〜低分子干渉RNA(Small Interfering RNA, siRNA)
:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
2本鎖RNAの存在はトラブルの兆候であることが多い。なぜなら、我々の細胞が持つRNAは、ほとんどが1本鎖の状態で存在しているからである(特にmRNAに関しては。但し例外的に、tRNAとリボソームはヘアピン状構造を取って短い2本鎖領域を形成している。)一方、多くのウイルスは長く伸びた2本鎖RNAを形成した上でゲノムを複製している。よって、細胞内に2本鎖RNAが見つかると、それは感染の兆候であることが多いため、往々にして細胞死を伴う活発な反応を開始する。ところで動植物の細胞は、ウイルスを直接攻撃するより対象を限定した防衛手段も持っている。この攻撃はRNA干渉(RNA interference、RNAi)と呼ばれている。 干渉の流れRNA干渉は、ウイルスの複製などによってできた長い2本鎖RNAがきっかけとなって始まる。ダイサー蛋白質(dicer、左図の右上にある青い分子、PDBエントリー2FFL)が、このRNA分子を小さい特徴的な断片へと切断する。その結果形成される、長さ約21塩基対のRNA断片は「低分子干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)」と呼ばれ、約2塩基対分片方の鎖が突き出し、その反対側の端にはリン酸が残った特徴的な構造をしている(左図の左上にある赤い分子、PDBエントリー2F8S)。この特徴はダイサーによって簡単に認識される。ダイサー蛋白質の中にある4つのマグネシウムイオン(図中の赤紫色の球)の並びに注目して欲しい。それらは2つのずれた切れ目をRNA2本鎖の中に作り、ひっかかりを形成していると考えられている。 アルゴノートダイサーによって作られた低分子干渉RNA分子は、アルゴノート(argonaute)蛋白質によって拾い上げられ、周囲に漂っている他のウイルスRNAを破壊するのに使われる。 左図の下に青色で示しているアルゴノート蛋白質はPDBエントリー1U04のもので、低分子干渉RNAから一方の鎖をひきはがし、それに適合するmRNAを探す。 それが見つかったら、RNAを切断し、破壊する。 このようにして細胞は、ダイサーによって見つけられた元の2本鎖断片と同じようなmRNAを除去する。 (ひとかけらのトリビア:アルゴノート蛋白質は、アオイガイ(Argonaut、貝殻を持つタコの仲間)が持つらせん形の貝殻に似た形をした植物の変異体から発見された。) 低分子RNAの海
RNA干渉が発見されてから数年のうちに、当初考えられていたよりもずっと広い範囲でこの反応過程が発見されるようになり、RNA小片は多くの機能的役割を持っていることが明らかになった。 siRNAと似たものとして、マイクロRNA(microRNA)と呼ばれる分子があるが、これは細胞核において通常のRNAから作られるものである。 マイクロRNAもダイサーによって処理され、RNAを対合しRNAの利用を阻害することにより通常のmRNA利用を調整する働きをしている。 またDNAゲノム中で相補的な配列が見つけ、メチル化やヒストン結合の水準を変化させることにより染色体の性質を調整する役割も担っている。 科学におけるRNA干渉動植物細胞は、特定のRNA鎖を破壊するこの機構をあらかじめ持っており、科学者たちはこれを最大限利用してきた。 現在は、人工的に干渉RNAを合成して細胞内に注入し、任意のmRNAを破壊することができる。 これが遺伝子の機能を決定するための速くて簡単な方法である。 ほとんどのmRNAを破壊するよう調整した干渉RNAを使い、蛋白質の合成速度を低下させると、どこがおかしくなったのかを見ることができるのである。 医学研究者は、例えばガン遺伝子を破壊するといった闘病のために低分子RNAを利用することも試みている。 ウイルスの反撃
ウイルスは巧妙で、攻撃されてそのままじっとしていることはまずない。 ウイルスはRNA干渉に対して反撃する方法を持っている。 ここに示した蛋白質はトマトブッシースタントウイルス(Tomato bushy stunt virus、TBSV)によって作られた抑制蛋白質(PDBエントリー1R9F)である。 siRNAに結合し、ウイルスのmRNAを破壊するその働きを阻害する。 左図に青で示した抑制蛋白質が、どのようにしてものさしのように働き、橙と赤で示した低分子干渉RNA(siRNA)の両端をを積み上げているのかに注目して欲しい。 このようにして、抑制蛋白質はsiRNAとぴったりの長さを持つRNA小片だけを見つけ出して阻害するのである。 構造を見るダイサーによって作り出されたsiRNA分子は簡単に認識できる。 それは、長さがそろっていて、通常みられない出っ張りが両端にあるからである。 上図に青でしめした構造は、PDBエントリー:1SI3から得られたアルゴノートの「PAZ」ドメインで、多くの蛋白質がsiRNAの末端(上図の橙色で示した領域)を認識するのに用いているものである。 ぶら下がっている塩基がどのようにして小さな窪みに結合しているか、そして外に出ている短い方の鎖の末端がどのように蛋白質の小さな出っ張りによって覆われているか、に注目して欲しい。 ※この図はRasmolで作成しました。同様の図を作成するには、当PDBエントリーのRCSBサイトにある、"Images and Visualization" の中の任意のオプションを選択して下さい。対話的操作のできるJmolバージョンもあります。また、PDBjのサイトにあるjVバージョンでも対話的に構造を見ることができます。 低分子干渉RNAについてさらに知りたい方へ
以下の参考文献もご参照下さい。
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