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日本蛋白質構造データバンク(PDBj: Protein Data Bank Japan)は、JST-BIRDの支援を受け、米国RCSBおよび欧州EBIと協力して、生体高分子の立体構造データベースを国際的に統一化されたアーカイブとして運営するとともに、様々な解析ツールを提供しております。 今月の分子(Molecule of the Month)
このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」を日本語に訳したものです。
No.101〜プリオン(Prions)
:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
プリオンは2つの型〜通常型と誤った形式に折りたたまれた異常型〜をとることができる蛋白質である。 これは別に珍しいことではないように思われる、 というのも他の多くの蛋白質も柔軟性があって異なる型をとることができるからである。 しかし、プリオンはもう1つ一般的ではない特徴〜 「異常型プリオンは、通常型プリオンを異常型に変えることができる」 という特徴〜を持っている。 こうして、少しの異常型プリオンがあるだけで、正常型プリオンは次々と異常型に変換され、正常型プリオン集合体全体を異常型に変えることができるのである。 この現象は、異常型蛋白質の濃度上昇という致命的な結果を招きうる。 例えば、PrPプリオンの異常型はヒトやその他の動物に致命的な神経系疾患を引き起こす。 さらに悪いことに、異常型プリオンには感染性があり、少しの異常型プリオンを服用だけで感染しその生命体を完全にこわしてしまう。 狂牛と人食プリオン蛋白質PrPの通常型(右図)は神経細胞の表面で見られるが、 異常型に変化すると長い繊維状になって集まり、 それが通常の脳の機能を妨げる。 感染は、たった少しの異常型蛋白質が食事で取り込まれたり、怪我をした時の血液を通して偶然入り込んだりして起こる。 壊滅的な事例がパプアニューギニアの地元民の間で発生したが、 その地方では葬儀の一部として人を食する儀式が行われていた。 この流行はおそらく、自然発生的に病気になったある1人の人間から始まったものだろう (PrP蛋白質は時々勝手に異常型状態になるが、これがごくまれに突発的な発病の原因となっている)。 そして異常型プリオンは、感染したヒトが食べられることでその社会の中に広まっていった。 さらに最近になって、狂牛病の原因となっているプリオンが、狂牛病にかかった牛の肉を食べることによってヒトにも広がりうることが心配されるようになっている。 牛のPrP蛋白質はヒトのPrP蛋白質と非常に似ていて、同じような様式の感染事例がいくつか知られている。 プリオン蛋白質正常型プリオンPrPはいくつかの部分から構成されている柔軟な蛋白質である。 右に示した図は3つのPDBファイルのデータで構成されている。 最も大きな左のドメインはPDBエントリー:1QM2のものである。 下部には脂質が結合し、通常は蛋白質を神経細胞の表面につなぎとめている。 また上部にも2つ炭化水素鎖が結合している(これらは全てオレンジ色で示されている、PDBファイルには含まれていない分子である)。 蛋白質鎖の残りの部分は柔軟性が高く、NMR分光分析によって研究された2つの部位の構造がPDBエントリー:1OEIとPDBエントリー:1SKHで報告されている。 長年の熱心な研究にも関わらず、PrPにはまだ多くの謎が残っている。 PrPは神経細胞で見つかるが、その正確な機能はまだ推論の域を出ていない。 しかも、研究者はPrPの異常型(感染性のある状態)の構造をまだ発見していない。 しかし、次に紹介する構造を見れば、そこで何が起こっているのか見当がつくだろう。 機能的なプリオン
自然はいつも驚きに満ちているが、プリオンもその例外ではない。 プリオンはヒトやその他の動物に恐ろしい病気を引き起こす一方で、他の生物では特定の役目を担っている。 例えば、上図に示すプリオン蛋白質HET-sをつくる菌類がいる。この蛋白質はPDBエントリー:2RNMのもので、異常型をとっているものである。 この蛋白質は菌類の成長において特別な役割を持っている。 ある個体は1つの型しかとらない種類のHET-s蛋白質を持ち、また別の個体は2つの型をとることができる少し違った種類の蛋白質を持つ。 隣り合った菌の集団が出会うと、細胞を融合させて一緒になり、大きな多核細胞を形成するのがよく見られる。 ところが、適合しないHET-s蛋白質の型を持つ細胞同士が融合するとその融合細胞は死んでしまう。 この仕組みは有利な点があると思われる。 なぜなら、集団の多様性を高め、 集団の隔離状態を維持し、おそらくウイルス感染の広がりが抑えているからである。 プリオン繊維異常型状態にあると、プリオンは強固な繊維を形成する。 最初に観察されたこの類の繊維の構造をPDBエントリー:2RNMで見ることができる。このエントリーは、菌類のHET-s蛋白質の一部分を含んだもので、 6つの鎖から構成されており、積み重なって長いコイル状の構造をとっている。 白で示した疎水性アミノ酸は三角形の窪みの中に包み込まれ、それが全体構造を安定化させている。 ※この図はRasmolで作成しました。同様の図を作成するには、当PDBエントリーのRCSBサイトにある、"Images and Visualization" の中の任意のオプションを選択して下さい。対話的操作のできるJmolバージョンもあります。また、PDBjのサイトにあるjVバージョンでも対話的に構造を見ることができます。 プリオンについてさらに知りたい方へ
以下の参考文献もご参照下さい。
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